概要

  • 題目:「曲がった時空のスピン輸送」
  • 日時:2018年3月15日(木)13:00-14:30, 14:45-16:15, 16:30-18:00
  • 場所: 矢上キャンパス 22棟108室 (物理学科会議室)

ここでは下記90分3コマ(板書)の講義を通じて、非慣性系におけるスピン流生成の微視的計算を一通り理解していただくことを目指す。

  • 1. スピン接続と回転系のDirac方程式
    20世紀初頭にバーネットやアインシュタイン・ドハースらによって発見された磁気回転効果の基礎となる、回転系の1電子問題を考える。回転系は非慣性系の一種であり、そこでのスピノールは一般共変Dirac方程式によって記述される。慣性力場とスピンの相互作用はスピン接続とよばれる幾何学量で表され、特に回転系においてはスピン・回転結合とよばれる相互作用が誘起されることを示す。
  • 2.非平衡グリーン関数法と非磁性金属/磁性体界面のスピン輸送
    非慣性系のスピン輸送の準備として、非平衡グリーン関数法によるスピン輸送の基礎事項を扱う。具体例として、非磁性金属/磁性体界面におけるスピン輸送の微視的計算を行う。これにより、スピンポンピング、スピンゼーベック効果、スピンペルチェ効果と呼ばれる接合界面のスピン流生成現象を統一的に理解する。
  • 3.バルク金属の渦度分布中のスピン輸送
    1,2を踏まえて、バルク金属の弾性変形運動および液体金属流体運動によるスピン流生成の微視的計算を扱う。
    バルク金属中に渦度分布のある系におけるスピン拡散方程式を、伝導電子の非平衡グリーン関数が従うKadanoff-Baym方程式を粗視化することによって導出する。

参考文献

  • 全体的なレビュー:
  • 1コマ目
    • F. W. Hehl et al., “General relativity with spin and torsion: Foundations and prospects”, Rev. Mod. Phys. 48, 393 (1976).
    • M.Matsuo et al., “Effects of Mechanical Rotation on Spin Currents”, PRL 106, 076601 (2011)
  • 2コマ目
    • Y.Ohnuma et al., “Theory of the spin Peltier effect”, Phys. Rev. B 96, 134412 (2017)
    • M. Matsuo et al., “Spin current noise of the spin Seebeck effect and spin pumping”, Phys. Rev. Lett. 120, 037201 (2018)
  • 3コマ目
    • M. Matsuo et al., “Theory of spin hydrodynamics generation“, Phys. Rev. B 96, 020401 (R) (2017)

講義で紹介予定の文献(随時更新予定)

  • スピン接続関係
    • 相対論
      • 須藤靖「一般相対論入門」
        • 相対論の計算(添え字の上げ下げ、アファイン接続や曲率、テンソルなど)になれるためにも章末問題・解答を一通り解いてみるのがオススメ。
      • 広江克彦「趣味で相対論」
        • 最小限の基礎知識だけでも読み進められるように非常に丁寧かつ工夫された構成の入門書。
      • 須藤靖「もうひとつの一般相対論入門」
    • ディラック方程式
      • 川村嘉春「相対論的量子力学」
        • ディラック方程式の基礎が大変丁寧に解説されている。
        • 非相対論的近似(谷-Foldy-Wouthuysen変換)も詳しい。
        • 付録Fに、一般共変ディラック方程式の記述あり
    • スピン接続
      • 中原幹雄「理論物理学のための幾何学とトポロジーI」
        • 7.10.2 曲がった時空におけるスピノル
      • 藤井保彦「超重力理論入門」
        • 第1章リーマン・カルタン時空
          • 2節 ロレンツ変換と四脚場
        • 付録A多脚場の幾何学的意味
      • 森田克貞「四元数・八元数とディラック理論」
        • 第6章四元数と4次元時空構造
    • 局所ポアンカレゲージ対称性
  • Keldysh形式関係

講義ノート

  • 鋭意作成中(少々お待ち下さい)