数学モード,物理学モード,数理物理モードのマルチリンガルな相転移P氏こと関根さんに数理物理の内容をマンツーマンで教えて頂く企画がスタートしました.
これから扱う内容の全体像,地図を提示していただいたのち,早速「物理の摂動論と数学の摂動論」について楽しいお話をしていただきました.
「ワンクッション」
全体像の提示では,集合論,位相論,連続関数の扱いにおいて実数論を「ワンクッション」おくことで学びやすくなるというご提案
物理の摂動論 vs. 数学の摂動論
物理にどっぷり使ってきた私にとって親しみのあるハミルトニアンを例に,摂動的扱いというのが数学的になかなか厳しいという目が覚めるようなお話でした.
- 2つの線型作用素 $A$, $B$の性質がようわかっていたとしても,その2つから構成される線型作用素の性質は全くわからない
- 特に$A+B$という単純な和の挙動さえわからない
はい,このステートメントをみて,「ええっ!」て我ながら良いリアクションをしました😁
私の感覚だと,2つの線型作用素$A$,$B$って,たとえば$3 \times 3$の正方行列イメージしているんですよね(-_-;)
直後,「ハバード模型のHopping termとクーロン相互作用の和」を例示してもらって
「たしかに!」
ってなりました.いわゆる波動性と粒子性の競合で磁性が発現する,極めて非自明な例ですね.
それに続いての例
$$
\begin{align}
H_0 &= -\nabla^2 \\
H_1 &= H_0 + \kappa x^2 \\
H_2 &= H_0 – \frac{\kappa}{|x|}
\end{align}
$$
はい,これまた
「たしかに!」
でした.さらに衝撃は,$H_0$の基底状態,
$$ k^2 \psi =0
$$
これをみたす2乗可積分な関数は存在しません
「おお!」
なんとヤバい,キビシい世界なんだろうか(感動)…
クーロン$U$が正の摂動か負の摂動かでも劇的に違う.
基底状態から正の摂動ならともかく,負の摂動は水素原子の例と調和振動子ポテンシャルの例を比較してみれば,劇的に振る舞いが変わる.
ダイオードのIV特性の例,$f(x) = 0 (x<0), f(x) = \exp(-1/x^2)$の例も!
解析的摂動論が意味を持つのは,
- スペクトルギャップを持つ摂動
- 光学フォノンに対する議論 (cf. ギャップレスな音響フォノンはダメ)
- 埋蔵固有値の摂動論 ex. QED
非相対論的QFTよりも相対論的QFTの方が数学的面倒くさい理由も興味深かったです.素朴に物理の摂動論をするだけなら相対論的QFTの方がローレンツ共変性などから見通しよく計算できたりするので,相対論的制約のおかげで簡単(?)になりやすい気持ちがありました.一方で,数学ではこの制約を満たすような模型をwell-definedに作るのが大変だとか… singularityが上がるとか.粒子だけでなく反粒子もあることからくる面倒くささとか.
私にとって非常に身近な例に潜む非自明な数理の入り口を教えて頂きました.まさに,こういう講義を受けたかったんです.今日の内容だけでも,もう数式の見え方が劇的に変わった気がします.それを確実にするべく,数学の勉強をしっかりしないと,と刺激を受けました.ありがとうございました!
次回以降もとても楽しみです😋